享受と呪い

彼の名前はプリンス
呪われた名前
けれどそれは唯一無二の名前であり
誰にでも扱えない
その輝かしい響きは私たちに喜びと畏怖を呼び起こす
なんてね
プリンスであることを楽しみ
プリンスであることに呪われ
プリンスであることに忠実であった
それに殺されもしたのだろうが
彼にはそれしかできなかったろう
だって彼はプリンスなのだから
プリンスらしく生きられないプリンスの生き方なんて
それこそ彼を殺すようなもんだ
魂の殺害 存在の殺害
だったら
プリンスはプリンスらしく生きることができて結果良しなのだ 良しとするしかないとこちらは判断するしかないのだ
彼は彼を味わい尽くしたと思う 思いたい
彼が現役でずっと走ってるのをこちら側で呑気に見て楽しんでいる間は気づきもしなかった
なぜなら彼が気づかせないようにしていたからだ
無理なく当たり前のように普通ではありえないことを飄々とやっていたから
だけど彼から取り残された今
彼のやってきたことを音楽なり映像なり書籍なんかで改めて知るにつれ
それらが当たり前ではなかったことに本当に今さら気づく
どれだけ無茶苦茶に無理なことを彼はやりこなしてきたのだろう と
あの本(ニール・カーレン著 Prince Forever in my life)を読んでからちょっとしたプリンスの動画や挙動を見ると胸が苦しくなり涙が出てしまうようになった(まあなんてことない通常運転じゃないか)
バネのようなしなやかな肉体による軽快なダンス 粋な身のこなし
ハイからロウまでよく通る魅力的な声をくりだす強靭な喉
先が見えすぎるほど見える慧眼
ありえないギターありえないピアノありえないプレイ 行動
それらは命と引き換えだったのか と
よくよく考えれば当たり前ではないことだなんてわかるだろう
あんなこと易々とできるはずがないのだ
プリンス以外の誰もができやしないことなのだ
Willing and Able
やれるしできる
実際プリンスにとってはそうだったんだろう
やれたしできた
いとも簡単に
けど身体は壊れる 当たり前に年はとる
自然の摂理とはそういったものだろうが
プリンスという器に神は才能や知恵ややる気や使命をもりもりに盛り込み過ぎたのだ
ならやるしかないじゃないか
常に頭に止まることのない音楽がある限り
それをアウトプットしなければならないじゃないか
そうしないといけないから そうしないとそれこそ彼は壊れてしまったろうから
享受と呪い
強靭な肉体と精神の最適者を神は選んだのだろうか
彼は強靭だった
だけど当たり前に同時に繊細で儚く脆かったろう
授かった信条信念をどう自分の中で処理し進んだのか
なんて人だったんだろう
なんて人を神はこの世に授けたのだろう
なんて人に私たちはこの世界で出会えたのだろう
多分人間じゃできないことを彼はやらされて また自分で選んでやってきて楽しんで苦しんだ
誰もが手にすることができる人生の喜びや幸せと引き換えに
誰もが手にすることができない彼だけの喜びや幸せを手にし
彼は私たちに悦びを与えた
彼は人間じゃない
だって彼はプリンスだから
悲しいことを書くなよ(自分に言っている)
- 関連記事
-
-
ノスタルジーはお盆の風物詩 2022/08/17
-
リアン・ラ・ハヴァス幻想 2022/08/04
-
入門書にして決定書 2022/07/19
-
恋する才能 2022/07/16
-
Prince Music in da House 2022/07/15
-
しめじのおじさんは知っていたのだろうか 2022/07/12
-
プライドは人を生かし羞恥は人を殺すのか 2022/07/11
-
享受と呪い 2022/07/09
-
プリンス インターナショナル ライブラリー(仮) 2022/07/08
-
高齢者にだって好みがある 2022/07/07
-
見えないものをずっと追って 2022/07/04
-
Starfish & Coffeeが聴こえる 2022/06/28
-
最も強く作用するプリンスの効能 2022/06/18
-
恥の精神 2022/06/15
-
本物は美しい 2022/06/14
-